第2章 海と大地のまんなかに。
俺はケッと吐き捨てて、その場にもう一度腰を下ろしながら海に視線を向けた。
まなかと真依の姿を探して海の上を彷徨っていた俺の視線が捉えたのは、波を立てて海を走る一艘の漁船。
俺は地面に座りかけていた腰を上げて、思わず立ち上がった。
海なのだから漁が行なわれるのは当然で、普通なら漁船がいても気にも留めない。
「あいつら、また勝手に漁場広げようとしやがって…!」
だげど、それが漁の禁止されている海村の真上なら話は別だ。
前にも勝手に漁場を広げようとしていた地上の奴らと一悶着あったと、青年会のおっちゃんから聞かされたことがある。
その時に誰かの畑の魚が捕り尽くされてしまったらしく、今では海村に近い場所での漁は禁止されている。
他にもいろいろとやらかしてくれるのが地上の奴らだと、小さい頃から教えられていた。
そんなことばかり聞かされて育ったからなのかはわからないが、俺は地上の奴らにあまりいい印象を持っていない。
そんなことを考えながら船の上に目を凝らすと、じいさんと俺と同い年くらいの男が一人、乗っているのが見えた。
少し日に焼けた肌に黒い髪。表情のないその顔は遠目にもかなり整っているように見える。
さらによく見るとそいつが着ているのは濱中の制服で、今日からそいつと同じ学校に通うのかと思うと少し嫌になった。
(それに、またおっちゃん達の愚痴聞く羽目になんだろうな……)
思わず出てきた溜息の少し後、もう一度漁船に目を向けた俺は息を呑んだ。
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