第2章 海と大地のまんなかに。
「……ひと休みしてからなっ、服も乾かねぇし…」
こんなのは苦しい言い訳で服なんてもう殆ど濡れていない。
たぶんちさき達の服も乾き始めているだろうから、俺がここに残るための言い訳にしていることも気付かれているはずだ。
それでも、黙っているよりかはいくらかマシな気がした。
「ふふっ…」
ちさきが小さく笑ったのを聞いて、やっぱりダメだったかと小さく溜息を吐く。
「やっぱり、二人が心配なんだ?」
揶揄うように呟かれたその言葉に、自分の顔が一気に熱くなるのがわかった。
「てめッ、ちさき‼︎」
俺はそれを隠すように勢い良く立ち上がってちさきを睨み付けた。
だけどちさきは俺のことなんて全く気にしていないのか、クスクスと笑いながら陸の方に駆けていく。
いつもなら追い掛けて行って文句のひとつでも言ってやるところだが、それじゃちさきの思う壺だ。
込み上げてくる恥ずかしさと怒りを押さえ込んでその場に踏み留まる。
ふらっと俺の視界に入って来た要は、ゆっくりとした足取りでちさきの後を追う。
「先行ってるよー」
要のいつもの間延びした声でさえ、今は俺を馬鹿にしているように思えてくる。
それもこれも全部ちさきのあの言葉のせいだ。
あいつらが心配なのかと聞かれると当然心配で、まぁ若干、俺が言い過ぎたような自覚がないこともないから、少なからず反省もしている…と思う。
けれどきっと、ちさきが言いたかったのはそういうことじゃない。
俺があいつのことを“特別”だと思っていることに気付いていて、だからこそあんな言い方をした。
動揺してああいう反応をしてしまった自分も馬鹿だったと思う。
それでもやっぱり人に指摘されると恥ずいし苛つくんだ。
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