第2章 海と大地のまんなかに。
海人の為に造られたのかどうかはわからないが、防波堤の側面には海まで続いている階段がある。
その一番下の段に手をつき、腕に力を込めて水から上がる。
水を吸って重くなった制服が肌に纏わり付いて少し鬱陶しいが、どうせすぐに乾くのだからとあまり気にせず階段を上った。
(あいつら、おせぇな……)
階段を上りきって地上と同じ高さに立った時、俺の頭を過ぎったのは置いて来てしまった二人のことだった。
さっきは勢いで先に行くなんて言ってしまったが、それが俺の本心じゃないことは自分でもよくわかってる。
いつも隣にいるはずのあいつが俺の隣にいない。
それだけでなんとなく落ち着かないし、不安になる。
これがどういう感情から来るものなのか、俺はとっくの昔に自覚している。
だけど、あいつが俺の想いに気付いていないことも、俺をそうゆう目で見ていないってこともわかってるんだ。
自分の一方的過ぎる感情に思わず溜息が出たが、俺は海の方に向き直って階段の一番上の段に腰を下ろした。
やっぱり心配なものは心配で、結局こうなってしまうのだがら救えないなと自分でも思う。
自然と下がっていく俺の視線に映り込んだのは、遅れて階段を上って来るちさき達。
必然的に二人と目が合い、気まずくなった俺は二人から目を逸らす。
「先、行くんじゃないの?」
逸らした視線をどこに向けていいかわからず、海を見つめていた俺の頭上から降ってきたのは要の静かな声だった。
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