第128章 不吉な暗示は重なりがち。
少しの間そうしていたが、二人が隊列から離れた事に近藤が気付き、声を上げる。
近藤「あれ?トシ?トォシィーーー??葵ィ咲ァーーー??」
決して近藤に悪気はない。二人の邪魔をしようと思ったわけではなく、初詣の人混みではぐれてしまったのでは?と心配したのである。近藤からの呼び掛けを聞いた土方は、葵咲をスッと放す。
土方「ああ、今行く!」
短く返事をした後、すぐに隊列へと戻った。
その場に残された葵咲は、土方の心情等知り得ない。何が何だか分からないまま、その場で立ち尽くす。
葵咲「・・・・・・・っ!?!?」
(葵咲:なに!?なに、今の!?不意打ちすぎて…っ!)
心臓はバクバク。顔は真っ赤っ赤。平常心へと戻すのに時間が掛かってしまった。そうして落ち着いてから停止した思考を元に戻し、懐から御守を取り出す。
(葵咲:…御守渡すタイミング、逃しちゃった。)
まぁこれ以降全く渡す機会がないというわけではない。仕切り直してタイミングを見よう。そう思ったその瞬間、葵咲の背後に異空間へと繋がる黒いゲートのようなものが現れた。
―― ヴォン。
葵咲「えっ?」
黒いゲートは葵咲の身体を吸い込んでしまう。
葵咲「きゃあああぁぁぁぁぁっ!!」
土方「!」
遠くから葵咲の叫び声が聞こえた気がした。土方は振り返る。
土方「…葵咲?」
近藤「どうかしたか?」
隣にいた近藤もつられて振り返る。
嫌な予感がする。胸の内でおみくじの言葉が再び浮かび上がった。
土方は先程 葵咲を抱き締めた場所に向かって走り出した。
土方「っ!」
近藤「おい、トシ!?」
土方達の不穏な雰囲気に他の隊士達も反応する。
「どうかしたんスか?」
近藤「大丈夫だ、お前らは先帰ってろ!」
まだ何かが起こったわけではない。状況を鑑みた近藤は、ひとまず隊士達にはそのまま帰るよう促し、自分は土方の後を追った。
そうして先程の場所へと戻る土方。その場にいたはずの葵咲の姿はない。
土方「葵咲?葵咲!?葵咲ァァァァァ!!」
近藤「!?」
叫び声虚しく、返事はない。葵咲はその場から忽然と姿を消した。