第128章 不吉な暗示は重なりがち。
先頭を歩く近藤は、隣にいる総悟へと話を振る。
近藤「とりあえず屯所戻るか?」
総悟「そうですねぃ。戻って羽子板勝負でもしやしょう。」
近藤「おぉ、正月らしくて良いな!」
総悟「勝者は副長になるって事でどうですかぃ?」
近藤「それ俺もやんの?俺、降格になるんだけど。」
自分の欲望を一切隠す事なく剥き出しにする総悟。近藤(局長)の立場を無視する総悟に、近藤はただただ呆れるしかなかった。
そんな真選組一行の大名行列、最後尾を歩くのは葵咲。
葵咲は懐に入れた御守(胸元)を手で押さえながら、すぐ手前を歩く土方の背をじっと見据える。
(葵咲:この御守、いつ渡す?帰ったら多分そんな雰囲気じゃないよね?後日ってのも間が延びちゃうし、今しかないんじゃ…。)
じりじりと付かず離れずの距離から見ていた事で、土方は背後からの不穏な空気を感じ取る。
土方「・・・・・。」
犯人が葵咲だと分かっていた為、土方は突如ピタリと足を止め、くるりと振り返った。
葵咲「!?」
―― ビクリ。
まさか振り返られるとは思っていなかった為に、激しく驚く葵咲。急には視線を逸らせず、バチリと目が合ってしまう。
若干の気まずさがあり、しどろもどろとしていると、土方は隊列から離れて葵咲の手を掴んだ。
土方「…ちょっとこっち来い。」
葵咲「えっ?」
ぐいっと引っ張られて木の陰へ。そして皆からは見えない位置で土方はぎゅっと葵咲を強く抱き締めた。
葵咲「!? ちょ、土方さん…っ!?」
土方「・・・・・。」
土方の頭の中には、先程引いたおみくじの文言が浮かんでいた。
『大切なものを失う兆しあり。用心せよ。』
(土方:まさか…な。)
占いの類を信じるタイプではない。だが、その言葉だけが妙に引っ掛かっている。胸のざわつきが収まらない。
葵咲はそんな土方にされるがまま。突然の抱擁に動揺している。