第127章 芸事に家柄は関係ない。
土方「確か、取り乱したり暴れたりした奴もいたっつってたな。それが変わったってのか?」
山崎「はい。数週間に渡って聞き取り調査を行なってたんですが、二~三週間ぐらい、ですかね。それぐらいのタイミングで緒方を庇うような人がいなくなったんです。」
土方「!」
山崎「むしろ得体の知れない医者が村に紛れ込んできた、なんて言う人もいて。」
信じ難い報告だ。耳を疑う事実に、土方は確認で問い返す。
土方「それ、同じ人間の台詞なのか?」
山崎「勿論です。」
土方「・・・・きな臭ぇな。」
白状した、といった様子ではない。しかも百八十度変わる発言に、不穏な空気を感じる。土方が顎に手を当てて唸っていると、山崎が続けた。
山崎「念の為に発言を覆した人には、再度血液検査を受けてもらったんですけど、どうやら合成薬とは別の物も投薬されてたみたいで。」
土方「どんな薬だ?」
山崎「それはまだ…。」
調査中。数値を見ながら再検査を行なう予定との事だった。再検査結果が出るまでにはもう少し時間が掛かるだろう。土方は頷いて山崎を見据える。
土方「…松本にも話を聞いてみるか。その血液検査データ、松本のところに持って行ってこい。」
山崎「分かりました。」
松本は真選組預かりとなる前も この件には関与していなかったと思われるが、医者であり、別の薬の製薬に関わっていた彼なら何か知っているかもしれない。少しでも可能性があるなら聞き取りを行なうべきだろう。その指示には山崎も納得だった。
その話を傍らで聞いていた近藤は、ふと何かを思い出したように土方に向き直る。
近藤「松本先生と言やぁ…お前、先生には感謝しろよ?」
土方「? 何の話だよ。」
近藤「お前らがくっつくように、葵咲の背中押したのは松本先生だからな。」
土方「!」
その事を聞いて大きく目を見開く土方。土方は松本が葵咲に想いを寄せている事を知っている。本人からは冗談めいた物言いでしか聞いた事はなかったが、葵咲に対する視線や配慮、元より華月楼での事件から彼を救い出した背景を考えれば分かる事だ。そんな松本が葵咲の背中の後押し…。自分が想いを寄せる女性を、他の男に目を向けさせるのは辛いものがあっただろう。その心中を察する。