第1章 いち (BSD/中原中也)
「はっ、はっ、あ………う、うぅ…」
扉を閉めた途端、堰を切ったように泪がこぼれ落ちる。
止められない、もはや拭うこともままならなくて、其の侭よろよろと部屋を進み、寝台[ベッド]へ倒れ込む。
「う、うぁ、…………くぅ……………っ」
何故自分が乞うも大人げなく泣いて居るのか。
普段あまり感情を表に出さないは其れを受け止められず、感情の暴走を少しでも抑えようと、敷布[シーツ]に顔を押さえつける。
けれど目を閉じた目蓋の裏に、先程コンテナの中で自分が行った殺戮が延々と浮かんでは消える。
逃げられない。
外の空気に晒されてるのが嫌で、掛布団に潜り込み、苦しみを抑えるように出来るだけ縮こまる。
「っ、ちゅうや、………ちゅうや、はやく……………っうう…」
思わず、彼の名を呼んだ。
「なンだよ、」
ふわり、声と共に布団ごと抱き締められる。
その丁度佳い重みと温かさにほっとしたのも束の間、中也まで布団の中に潜り込んできて、今度は直にきつく抱き締められた。
「ちゅう、や」
「ん、居るぜ。落ち着け、。」
そう耳許で囁きながら、中也がの背中を擦る。
掌の一定の動きと温もりに、少しずつ目蓋裏の映像が霧散してゆく。
恐る恐る眼を開ければ、滅多に見られない優しい表情の中也と目が逢った。
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