第1章 いち (BSD/中原中也)
「首領には俺が報告してくる。、手前は先に部屋に戻ってな。」
アジトに着いてセダンを降り、中也がそう言ってを見れば、彼女の顔は先程以上に真っ青で。
そのうえ、中也の腕が離れたことに、無意識だろうが瞳に不安の色が浮かぶ。
だが勿論報告は行かねばならないし、だからといっても連れていくのは、彼女にとって今はあまり首領には会いたくないだろうから、よくない。
そんな中也の数秒の思考に気付いたのか、は出来る限り普通に彼を見返す。
「なんて顔してンだ。」
「そんな変な顔してた??……大丈夫だよ、中也。報告、頼むね。」
極力笑みを浮かべるけれど、きっと中也には通じていないのだろう。
少し眉を寄せて、それから安心させるようにの黒髪を撫で鋤いた。
「あァ。少し待ってろ。」
肩を押して体を反転させられ、は中也に背中を向けて部屋へ向かう。
出来るだけ、早く。
普段はいつも冷静な彼女だが、定期的にくる今みたいなのにはどうしようもなくなる。
人を操る異能の副作用的なものなのか、原因はよくわからないが、仕事とはいえ人を殺すことに対しての罪悪感や拒絶感に苛まれるのだ。
「っ、く…………」
意思に関係無く瞳からこぼれ落ちそうになる水を、胸を抑えて耐える。
廊下沿いに自室の扉が見え、思わず小走りになって駆け込んだ。
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