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短い話たち。

第8章 はち (DGM/ラビ)



「どうしたって、それは私の台詞だよ、ラビ?方舟から帰ってきてからのアンタはなんか変。どうしたの?」


私の言葉にラビが明らかに動揺する。全く、分かりやすいにも程がある。

けれどやっぱり直ぐに口を開くことはなくて、すごく葛藤しているようで。もう少し押さなきゃいけないかな。


「なんか言いたいことあるんでしょ?もし私が傷付くようなことでも、黙っていられる方が何倍も辛いんだけど。」


ブックマン後継者であるラビの恋人になった時点で、ある程度の覚悟はしているつもり。彼の立場上の葛藤も苦しみも悩みも、一緒に背負って、迷って、苦しんで。この先、傷付くことだっていっぱいあるだろうけど、それでも出来るだけ隣にいたい。そう思える程に、私はラビが好きなのだ。

一時の沈黙。その綺麗な翡翠の片眼からは絶対に目を離さずにいれば今にも吸い込まれそうだ。

それからラビが一瞬眉を寄せて。手首が掴まれて引かれて、私はそのままラビの上にうつ伏せになるようにぎゅうっと痛いぐらいに抱き締められた。

ラビの匂い。温もり。心臓の音。


「………を、」

「………」

「、刺し、ちまった、ナイフで、」

「……それは、夢でしょ?」

「んなことはわかってるさ、けど、……そんときの、感触が、掌から消えなくて、」

「……うん」

「ごめんさ、、オレ、お前を……!」


ラビの腕が震えてた。

がばっと起き上がって、ひどく歪んだ彼の顔を包み込んで、言葉ごと噛み付くように口づける。

何度か啄んでから唇を離し、ラビの瞳にしっかり私が映るように、額をくっ付けて彼を見つめる。


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