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短い話たち。

第7章 しち (BSD/中原中也)


暫く其のまま沈黙が続いて、その間口を開こうか否かの葛藤と闘っている中也の顔面劇は結構面白かった。少し笑いそうなのを堪えてたのは秘密だ。

中也は意を決したように小さく息をつき、なんと私の後ろの壁に顔の横で手をついて、私との距離を縮めた。ここで真逆の壁ドン。


「…。」

「ん、何ですか。」

「……俺は、手前が好きだ、昔から。今まで何回嫉妬したか知れねェし、太宰にああ云われて本気で焦った。手前の姿見つけた途端、思考が追い付く前に手前に口付けちまッてた。……順番間違ったのは謝る。けど、俺が何れだけ手前を好いてンのかも判っただろ。……俺は我ながら呆れる位手前に惚れてンだよ、。」


………うわあ。

あの葛藤の末出てきた言葉がこんなに直球だなんて思ってなかった。

今度は私が中也に穴が開くんじゃないかッて位見詰められて、顔に熱が集まるのが判る。だって中也、滅茶苦茶美形なんだもん。

でも、私が挑発したんだから、逸らす訳にはいかない。唇をぐっと噛み締めて、確り中也を見返す。


「……ん、私も、」

「………」

「中也が、ずっと、好きだった。」


わ、やばい、泣きそう。

想いを伝えるのがこんなに大変だとは。さっきの言葉を云った中也を少し尊敬する。

そして、堪えてた涙が遂に溢れそうになった瞬間、私は中也の腕の中に居た。ふわりと彼の匂いに包まれる。


「中也」

「……何だよ。」

「ふふ、中也がそんなに一途だったなんて知らなかったよ、私。女遊び凄いのかと…」

「…馬鹿にしてンだろ、手前。」


くっ、と喉で笑えば、中也は私の肩口から顔を上げて、こつんと私の額を弾く。

なんて、そんなこと云ってみるけど、中也が女遊びなんてしてないってのは判ってた。女の香水の薫りを纏ってたことなんてなかったから。其れで何時も安心してたのも確かだし。


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