第7章 しち (BSD/中原中也)
「中也、これからもまた改めて宜しくね。」
そう言って今度は此方から、と彼に抱き着けば、ちゃんと受け止めてくれた。
私、中也より背小さくて良かった…。
「あァ、宜しく。つッても今迄とそんな大差ねェだろうけど。」
「そうねえ。」
「まあやれることは増えたな、やっと。」
そう云う中也の顔がにやりと歪んで、瞳の奥に熱が見えて。
あ、危ないと思う前に、お互いの唇が重なった。先程とは違って何度か優しく啄まれて、そしてぬるりと舌が入ってきて隅々まで犯される。
思考が融かされて、身体から力が抜けそうになったとき、部屋の外が騒がしくなって唇が離れた。
「んっ、……はあ、何事?」
「……太宰が逃げたのがバレたんだろ。」
「え、逃げた?中也逃がしちゃったの?」
「また嫌がらせだよ、お得意の。」
「未だされてたの!?」
いや、最早ここまでくると太宰何れだけ中也のこと好きなんだ。呆れる。
中也がとても嫌な顔してるから、相当なことされたんだろう。でも嫌がらせの内容が少し気になったりもするから、其れは後で太宰に電話してみるとして。
「なら続きはまた今度、だな。」
「………こわ」
「は、今迄散々我慢してたんだ。」
覚悟しとけよ。
態々(わざわざ)耳許で、しかも何時もより少し低い声でそう云われて、背筋に電気が走ったみたいに身体が震えた。
……これは今日の夜にでも腰砕け決まりだ。
でも、それも中也になら構わないかななんて思って仕舞う私も相当なんだろう。
とりあえずこの結果に免じて、太宰にも一応お礼云わなきゃな、なんて思った。
Fin
(もしもし太宰?)
(嗚呼、じゃないか!如何だったかな、中也とは上手く行ったかい?)
(……此れも折り込み済みだったの)
(うふふ、の為だよ。偶にはこういう嫌がらせも良いだろう?)
(……………赦す。)