第6章 ろく (BSD/中原中也)
「……なンか聞いて悪かったな。」
「ううん、大丈夫…全然……」
朝の出来事を思い出して遠い目をして居たからか、中也も何かしら勘づいた様で心底同情された。
実際首領からの贈答品[プレゼント]は今に始まったことではなく、私の箪笥には数々のドレスが詰まっている。但し1度も着たことはないのだが。
「まあ別に期待何てしてないけどさあー唯、こう、メリクリ言う位はしておきたいッていうか、世間の雰囲気位には乗りたいッていうか………」
何だか一人で気分が上がってたみたいで恥ずかしくなり、ぶつぶつと言い訳を連ねる。が、云えば云う程虚しい。
はあ、と口をついて出た溜め息。
目線を下に落として、諦めの様に今日とて有る仕事のことに思考を巡らせようとした。
すると、視界に有った中也の脚が止まり、何事かと思っていれば、俯いた顔に陰を作っていた左側の髪を掻き上げられ、視界が明るくなる。
微かに首許に触れた少々冷たい手に、びくりと体が震えた。
「っ、中也…?」
「じっとしてろ。」
体を強張らせたまま目を瞑っているので、中也の手の感触が嫌と云う程より鮮明に感じる。
彼の手は耳許へ移り、今度は耳朶を弄られて。
耳許を触れられるのは弱いから、中也の指が少し触れるだけでも反応して仕舞う自分の体が大層憎らしかった。
屹度彼はそういう私の様子も楽しんでいるんだろうけれど。
「ん、ほらよ。」
右側も同じ様にされて、その声と共に彼の手が離れて有る意味拷問の様な時は終わる。
耳朶が少し重い。最近は何も刺してなかった耳朶の穴に、ピアスを刺されたことは判る。
一応女子の嗜みとして胸ポケットに入っていたコンパクトを出して覗き込めば、其処には小さな蓮の花を模したピアスが収まっていた。
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