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短い話たち。

第6章 ろく (BSD/中原中也)


「メリークリスマス!中也!!」

「……あァ??」


上機嫌に中也の私室の扉を開けて叫ぶ。

そうすれば丁度黒の外套を羽織ろうとして居た彼に案の定ぎろりと睨まれた。こわい。

そりゃあ子供じゃないし、そう容易く物を賜れるとは思わないけれど、矢っ張り世の中の空気くらいには乗りたい訳で。

まあ勿論此れ程まで訝しげな視線を向けられたら、少しは後悔するけど後の祭り、だ。


「朝っぱらから上機嫌だなァ手前はよ。」

「だッてクリスマスだよ??」

「手前は何時から基督教徒[クリスチャン]になったンだ。」

「日本の文化です此れは。」


呆れた顔で中也は出てきて、私は彼の後に続く。

出てきたとき何故かポンポンと頭を撫でられたから、そんなに不機嫌には成ってない様で安心する。

とは言え普段余りする事ではないから逆に怖かったり。


「つーか、贈答品[プレゼント]なら首領ンとこ行きゃあ死ぬ程貰えんだろ。」

「うん、もう貰った。」

「は?」


正しくは貰ったんじゃなく置いてあった、のだが。

如何して枕元に有ったのかについては考えたくない。夜中に、しかも年頃の女の子の部屋にいい年した中年が侵入しただなんて想像もしたくない。サンタさんだサンタさん。

そのうえ中身が、エリス嬢が着そうな襞[フリル]付きのドレスだったなんてことも記憶から消したい。広げた瞬間ビリッといきそうになった。

要するに碌な贈答品[プレゼント]じゃなかったと言うこと。


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