第4章 よん (BSD/中原中也)
「あ、中也……気付いた?」
そう言って彼の顔を覗き込めば、舌打ちと共に壮絶に嫌な顔をされた。
「…手前、勝手に眠らせただろうが……」
「あら、覚えてたの」
「当たり前だ、馬鹿」
そう毒づきながらも、苦しそうに頭を押さえる中也。
まだ『汚濁』の後遺症が残っているのだろう。
「中也、早く部屋に行こう。まだきついでしょう?」
「ん……ああ。」
中也に肩を貸して立ち上がらせる。
彼は小柄だとはいえ私の方が小さいし、何より彼は筋肉が多いからか体重は結構ある。
けれど肩を貸してもあまり私に負担が懸からないのは中也の気遣いなのだろう。
……少し口角が緩む。
「ったく…太宰の奴、拠点まで送り届けろっつったのに……」
「太宰はやらないでしょ。挙げ句に私に押し付けてくるし。」
「何考えてんだ彼奴は……」
太宰はそれが何時ものことなので慣れてはいるけれど。
中也も判っているはずなのに、乞うやって未だに太宰の嫌がらせの標的にされている。
「まァけど、乞ういう時は手前に会いたくなるし、丁度佳かッたか……」
「…………」
如何した、此奴は。
後遺症で頭が弱くなってるんじゃないか…
「おい、今失礼なこと考えてンだろうが。」
「考えてない考えてない。」
恐らく赤いであろう顔を必死に隠しながら、到着した中也の自室の扉を開ける。
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