第4章 よん (BSD/中原中也)
大体、何故探偵社の私がマフィアの中也を迎えに行かなきゃいけないのか。
太宰には『大事な人でしょ』とかにやにやしながら言われそうで、考えただけで本気で腹が立つ。
けれど実際のところ、今や立場は違えど恋仲では在るので、矢張り中也には甘くなって仕舞うのだが。
私は一つ溜め息をついて、どうせマフィアに送るのだし車を出してもらおうと道造に電話をかけた。
そして今に至る。
「……態々来てもらって悪いね、道造。」
あまり舗装もされていない暗い道を慎重に車を進ませる彼に目を向ける。
私がマフィアを抜けたときより少しばかり大人な横顔になっていた。
道造はちらりと此方を見て、すぐに目線を前に戻す。
「いえ、姐さんの頼みですから。」
「ありがと」
「………あの、姐さんに連絡がいったということは、姐さんと中原さんは……」
「道造。」
マフィアに居たときも中也との関係をおおっぴらにしていたわけではない。
況してや今は敵同士。
道造が不審に思うのも無理はない…けれど。
「それはあまり聞かないで欲しいかなあ……?」
「っ、そう、ッスよね…すいません」
あれ、そんなに威圧的になっちゃったかな。
少し怯えた表情の道造に若干悪気を覚えるも、まあ黙らせるためには仕方ないかと自己完結した。
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