第3章 さん (不機嫌なモノノケ庵/阿倍晴齋)
「もう子宮取りたい……」
「孕めば止まるな」
「うっさい晴、寝言は寝て言って」
そう刺々しく言い放って、もう会話さえ辛いと言うようには再び突っ伏してしまう。
ああ、これはあまり刺激出来ないな。
経験的にそれを感じて、阿倍はどうしたものかと思考を巡らす。
別に放置していてもいいのだが、ずっと唸られてるのも五月蝿いし、何よりここまで辛そうなのを見ると放ってはおけないのは惚れた弱味か。
物怪庵を呼び出そうにも、今は隠世からの客人がお待ちであるから、そんなところに病人は寝かせていられない。
ふと周りを見渡せば、心配顔のモジャと目が合った。
「……、毛玉を枕にして少し横になってろよ。」
阿倍の提案に、モジャもブンブンと首を縦に振る。
けれどは先程と同じようにじろりと阿倍に目を向けると、
「…それはモジャが重いでしょ。」
あたかも阿倍が悪い提案をしたかのように、そう言った。
彼女の言葉に、そんなことない、とモジャが今度は首を横に振るがは気付いておらず。
阿倍は、いつも芦屋がやってるから別にいいだろと思うもそれを今言えば恐らく火に油だ。
触らぬ神に祟りなしってか……。
そう思ってモジャに見れば、モジャは意を決したようにに近付き、突っ伏した頭にげしっと体当たりした。
.