第2章 に (BLACKBIRD/伯耆)
「っ………!これは……!」
私の傷口と、自身の口内に広がる血の味で、自分が何をしていたのか理解したよう。
彼の様子から、やはり直ぐに傷を隠せばよかったと後悔したが後の祭り。
「僕は、何を……」
「悠」
苦しそうに顔を歪ませる悠に、私は彼の思考を遮るように彼の名を呼ぶ。
すると、躊躇いながらも悠は私の方を向いた。
「…よかった、気がついて。」
彼の顔を改めて見た途端、自然と安堵の笑みが浮かんだ。
けれどそんな私とは裏腹に悠が唇を噛み締めたと思うと、ぐっと手を引かれ、きつく抱き締められた。
「……悠…?」
「…弱ってるときの僕に血は与えるなって、いつも言ってただろう…………なんで君はいつもそんなことを…………!!」
確かにいつも、耳にたこが出来るぐらい、悠にはそう言われていた。
僕の中には獣がいるから、と。
時折自分でも抑えきれない程の獣が。
…それが、君を喰い殺してしまってもおかしくはないのだから、と。
「…そんなこと、なんかじゃない。」
私の言葉に、悠がぴく、と震える。
「悠が傷を負って苦しそうにしてるのにほっとくことなんて出来るわけないでしょう。」
「…でも……!」
「でも、じゃない! 私に出来ることをやらせてよ!大切な人も守れなくて、私が薬師である意味がないじゃない!!」
自分が思っていた以上に声が出た。
けど、悠は頑固だから、ここまで言わないとわかってくれないのだ。
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