第2章 に (BLACKBIRD/伯耆)
「お前ら、離れるぞ。」
匡がそういうと、令さんや丈さんはその意味を理解したのか頷き、令さんが悠を少し抱えて廊下から部屋の中に入れる。
それを見て、私は匡の思惑に気付き、はっとした。
「っ、ごめんなさい、取り乱した。」
一緒に行っていた剛や丈さんだって怪我を負っているのだ。
自分は薬師なのだから、私情を挟むわけにはいかない。
悠よりも怪我が軽そうな丈さん達を先に治療しようと、二人に駆け寄ろうとした。
「俺たちはあとでいいよ、ちゃん。」
「せやせや。先に伯耆治したったりいな。」
私の両肩にぽん、と手を置いて、丈さんが微笑む。
その斜め後ろでは、ほれ早く、と急かすように剛が手をひらひらさせている。
「でも、」
「ね、ちゃん。俺たちは自分でも手当てできるから。伯耆助けてやりなよ。」
少し躊躇いを見せる私の顔を覗き込むように言って、丈さんは私の体を反転させて少し背中を押した。
「……ありがとうございます。あとで血薬(けつやく)持っていきますので。」
「ん、頼んだ。」
私が背中越しに小さく丈さん達に会釈をすると、匡が、状況を理解できていない三つ子と実沙緒を促して部屋を出させる。
そして去り際、匡は私に耳打ちした。
「…ちゃんと短刀使えよ、。」
匡の言葉に、私は少し驚いて彼を見上げる。
女なんだからあんま傷つけんな、そう付け加えて私の頭をくしゃりと撫でると、匡も部屋を出ていった。
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