第2章 に (BLACKBIRD/伯耆)
「様!!」
悠や剛、そして豊前が鵺のところへ行ってから数時間後。
戦闘力が高い鵺相手に、気が気でなかった。
悠の部屋で落ち着きなく待っていたとき、次郎がバタバタと部屋に入ってきたことで、私はすぐに状況を理解した。
「伯耆様が…!」
「っ………!」
次郎がその名を出すが早いか私が部屋を出たのが早いか。
私は即座に部屋を出て、今彼らがいるであろう部屋に向かう。
そして庭に面した廊下に集まった人だかりの中に真っ赤な紅を見つけ、私は目を疑った。
「……!」
私の存在に気づいた豊前や剛が、焦ったように私の名を呼ぶ。
しかしそんなことを気にしている暇もなく、私は、大量に血を流し、苦しそうに息を吐く悠に駆け寄った。
「悠!!!」
名を呼んでも、悠は傷の痛みの方が強いのか、肩で息をするだけ。肩から胸にかける傷が余程深いのだろう。
多くの血を失っているようだった。
「っ………」
一刻の猶予もない。
私は自分の手首を咬もうと、口に手首を持っていこうとした。
だが…
「待て、。」
その手首を、近くにいた匡に掴まれる。
何故、と憤りの目を向けると、匡は私を目で制し、周りにいる令さん達をみやった。
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