第5章 金沢観光
10分程歩くと尾山神社が見えた。
「ここ、神社だよね?」
まつのくりすてぃーぬは竜宮城の様な出で立ちの神門に驚いた。
「竜宮城みたい!」
「じゃあまつのくりすてぃーぬは乙姫だな。俺は美しい乙姫を探し、深海までやって来た浦島太郎・・・」
「うん、ちょっと意味が分からない。」
「う。」
言葉に詰まったカラ松は革ジャンの襟を正し、何事もなかったかのように振る舞う。
手水を済ませた二人は拝殿へ向った。
拝殿は神門と違い、落ち着いた、いわゆる神社というたたずまいの建築である。
カラ松は参拝するのでサングラスを外す。こういう所を見ると、カラ松は常識があるんだよねとまつのくりすてぃーぬは思う。
今の時間、境内には人があまりいない。ゆっくりと二人は手を合わせた。
一礼し、階段を降りようとしたが、まつのくりすてぃーぬが右を向いてカラ松に話しかける。
「カラ松、おみくじ引きたい。」
「おお、いいぞ。」
まつのくりすてぃーぬが”男みくじ、女みくじ”と書かれたおみくじを見つける。
「へー、変わったおみくじだね。これ引いてみよ。」
「男みくじ・・・フッ、なかなか男らしいネーミングだな。俺が引くに相応しい。」
「だからなんで上から目線?」
二人はおみくじの箱に手を入れ、思い思いに引く。
まつのくりすてぃーぬの引いた女みくじには梅の花が、カラ松の引いた男みくじには前田利家の烏帽子が描かれている。
「あ!」
まつのくりすてぃーぬは小さく叫ぶ。おみくじには大吉の文字が書かれていた。
カラ松に目を向けると、サングラスをかけている。眉の角度はいつもの通り、キリッとした角度だ。
しかし、表情が読み取れない。
「カラ松どうだった?」
「ん?うむ・・・」
口ごもるカラ松に対し、凶でも出たのかとまつのくりすてぃーぬが思っていると、カラ松がこちらに顔を向ける。
「そうだな。さしずめa little lucky、ささやかな幸福といったところだ。そう、それは触れたことにすら気付かない程の軽やかな天使の羽、それはまつのくりすてぃーぬの美しさの前では色褪せる薔薇の花びら・・・」
小吉らしい。
小吉を説明するのに、いつのまにか羽や花に話を展開させてしまう男・・・それがカラ松。他の兄弟に邪見な扱いをされるのも納得だ。
しかし、それでも彼を愛しいと思うのがまつのくりすてぃーぬという女である。