第10章 心の答え
「…」
「主様…?」
一期が黙り込む春香の顔を心配そうに覗き込んで来たので、はっと我に返り、慌てて笑顔でなんでもないと返した。
と、一期が何かを見つけた。
「あれは…」
「一期?」
一期は、首を振りながら、春香に少し寂しそうに笑いかけた。
「…い…え、あれが、綺麗だなと思いまして…」
「そっか…クリスマスツリー…」
一期の見つめる先を振り返って確認すると、クリスマスツリーのイルミネーションが綺麗に輝いている。
去年、一期と見に来たのと同じものだ。
あれから一年も経ってしまったと実感した。
そして、その期間にあった出来事を思い返してしまう。
一期が破壊されてしまった事。
人生のドン底を進む様な日々。
それでも、本丸の皆に励まされながら、戦闘に出れる様になった事。
そして…加州の気持ちを知った事。
特にこの約1年間は、その加州に支えられながら、日々を過ごしていた。
離れている時間の方が短い程、ずっと傍にいてくれたのだ。
居て、当たり前になっていた。
その彼に、今日は突き離された様でショックを受けている。
…そう。
振られてしまった様な、ショックを受けているのだ。
今更ながらに気付いた自分に、春香は、戸惑ってしまった。
「もう、帰りましょうか。」
「えっ?どうして?」
一期の言葉に、春香は驚いた。
一期は、すっと優しい笑顔を浮かべ、春香と向き合うように立った。
「春香。今、貴方の心の中にいるのは、私ですか?…それとも、加州ですか?」