第10章 心の答え
春香は、クリスマスに彩られた街を歩きながら、先ほど加州に言われた言葉を思い返していた。
ちゃんと向き合う…
一期の記憶が消されている事と?
それとも…自分の中の気持ちと?
確かに、向き合わなければならない。
何故、それから自分が逃げているのか、その理由が自分自身で分からなかった。
目の前では、とても楽しそうな一期が居る。
「主様。これ、とても可愛いですね!」
一期は、ショーウィンドウに並んでいる小物を見て嬉しそうに言う。
傍に寄り、みると確かに可愛い。
「可愛いね。そう言えば、前の買い物の時に、ミツがこんなの欲しがってたなぁ…」
「そうなんですか?」
一期が聞き返す。
それに、うんと頷くと、春香は嬉しそうに、加州の事を話し出す。
「ミツはね、私よりも女子力高いから、服選びとかは私よりもセンスいいんだよ。」
「ふふふ。そうなのですね。そう言えば、この服も加州に選んで頂きました。」
一期は、うんうんと頷きながら、その話を聞いている。
それがきっかけになったのか、いつの間にか、春香は、自然と一期と会話が出来ていた。
「主様は、加州の事をよく見ていらっしゃいますね。」
一期にそう言われ、気付くと、結局加州の話をしてしまっている自分に気付く。
「…本当だね。近侍として、ずっと傍で支えてくれてたから。特に、ここんとこは支えられっぱなしなんだよね。」
苦笑いを浮かべながら話す春香に、一期は優しい微笑みを向けている。
あぁ、この笑みだ。
大好きだった、一期の真っ直ぐな優しさ溢れた笑み。
懐かしい。
でも、何かが違う。
何が違う?