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淡い恋 [刀剣乱舞]

第6章 苦しい胸の内


「ゆっくりで良いからね。…じゃあ、行くよ。」

加州が、春香の様子を横から伺いながら、声をかける。
目を閉じて深呼吸をして、門の所に居る安定にコクリと頷いた。
安定は頷き返して、戦場へと繋がる門を開ける。
開いた瞬間、一歩後ろへ下がりそうになる気持ちを抑えて、なんとか前へと歩みだした。
後ろに控えている一番隊と、薬研がじっと様子を見守っている。
大丈夫、大丈夫と自分に語りかけるが、心臓がドキドキと音を立てる。
震えがまたガクガクと出始めた。

「春香…」

横では、加州が心配そうに覗き込んでいる。
それに対して、春香は苦笑いを浮かべている。

「戻ろっか…?」
「ううん…せっかく、一歩出たんだもん。もう少し、頑張りたい。」

そう言いながらも、頭に蘇る一期の最期。
ーでも、一期が今の私を見たら、きっと後悔しちゃうからー
そう思う気持ちで、なんとかまた一歩外へと出た。
また、深呼吸をする。

「春香。俺たち一番隊が後ろには控えている。薬研も居る。何も心配はいらないぞ。」
「そうだぜ!俺っち達が傍に居るぜ!」

三日月が、心配になって声をかけると、後ろを向いて力なく、でも、嬉しそうに頷いた。
そしてもう一度前を向き、また一歩出そうとする。
息が少し上がっているのか、肩が上下している。
加州は思わず、春香の手を握っていた。
すると、少し落ち着いたのか、手をぎゅっと握り返してくれる。
そうやって、なんとか、少しだけ外に出れた所で、薬研が声をかけた。

「大将!その辺で今日はお終いにしよう!少しずつでいい。明日はもう少し出れるだろうからな!」
「…分かった。皆、ありがとね。ごめんね。情けない状況につき合わせちゃって。」

後ろを振り返って、苦笑い混じりに皆にお礼を言うと、頑張ってる、大丈夫と声をかけてくれる。
春香は、自分の本丸の温かさに明日も頑張ろうと思えた。
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