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淡い恋 [刀剣乱舞]

第6章 苦しい胸の内


「春香はそろそろ部屋に戻りな。あんまりうろうろすると、体に障るよ?」

和泉守の部屋を出て、そう加州に促されたので、春香は少し眉を下げて、上目遣いで見てくる。

「わかってるけど…ミツと少し話したい。」
「…分かった。じゃあ、部屋まで送ってくから、その間、ね。」

春香のお願いを断れない加州は、心のもやもやを隠しながら、横に並んで歩き出した。
春香は、嬉しそうに微笑むと、軽快に歩き出そうとする。
が、やはり、本調子ではないのだろう。
ふらっとよろけてしまった。

「あっぶないなぁ…春香、やっぱり調子、戻ってないじゃん。」

なんとか抱き留めた加州が、安堵のため息をもらした。
その腕の中で春香は、ばれてしまったと苦笑いをしている。
加州は、春香を思わずぎゅっと抱きしめた。
その胸の内にいるのが自分だったら、こんな想いは絶対させないと。
春香は、一瞬驚いたが、そっとそのまま、加州の背中をさすった。

「ミツ。心配かけたね。ごめんね。…ありがとね。」
「…」

そうじゃないと言いたかったが、加州はぐっと堪えた。
ここで伝えてしまっては、今の春香には重荷にしかならないと分かっていたのだ。
暫く抱きしめた後、加州はすっと体を離して、笑顔を作った。

「春香はすぐ無理するから、なんかあったらすぐ言ってよね!俺、春香の近侍なんだからさ!」
「ミツ…ありがとう。」

今度は、春香からぎゅっと抱きしめた。
加州の心は、それによってまた、ぎゅっと抑え込まれてしまった。
その後、春香の部屋に着くまでの間、色々会話をしていたのだが、加州の頭には一切入って来なかった。

次の日から、春香は、刀剣達との交流を深める様に心掛けた。
いつもは、内番にはほとんど顔を出さないのだが、そちらにも顔を出し、堀川達がしてくれている家事にも参加する様にした。
主のその行動に、少し重くなりつつあった、本丸の雰囲気は明るさと、より深い絆を作るきっかけになった様だ。
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