第6章 苦しい胸の内
「後な、主にはもう少し、他の奴らとも関わってやって欲しいってのもあるんだ。まぁ、これまでが何かと忙しかったからな。お前さんが本丸全体を見る、いい機会だと思うぜ。」
そう言われて、はっとした。
本当にその通りだったのだ。
最初は加州だけだった本丸が、いつの間にやら四番隊まで編成できる程の人数になっている。
その上、降りてくる任務をこなすのに必死の事も増えている。
会えば話をするが、会わなければ全く話をしないのが普通になってしまっていた。
隊ごとの行動は把握していても、個人、個人で何をしているのかと聞かれれば、何かと関わりのある者以外は分からない。
特に、このところ遠征中心で活動してもらっている四番隊においての会話は、報告業務が殆どだ。
「兼さんの言う通りだね…私、本丸の中の事、皆の事、ちゃんと見れてなかったかも。うん。この機会に、皆ともっと交流したいな!」
やっと目に光の灯った春香の顔に、和泉守は安堵のため息をついて、わしゃわしゃと、その頭を撫でた。
「ちょ、ちょっと兼さん!私を子供扱いしないでよね!」
春香が、むくれた顔をするので、和泉守は面白そうにしている。
「俺からしたら、お前はまだまだお子様よ!」
「主は、お子様だったのか…」
「まんば!私はお子様じゃないから!」
山姥切がその言葉を鵜呑みにした様だ。
いつも通りの賑やかさに、ほっとしながら、加州の苦しい胸の内は、晴れる事はなかった。