第6章 苦しい胸の内
加州、和泉守、山姥切と春香。
四人が顔を揃えた所で、和泉守が、話を切り出した。
「皆に集まって貰って、悪いな。主の体に負担がかからない程度に、さっさと終わらせちまうからよ。」
加州は、少し不機嫌そうだ。
「なら、要件を早めに話してよ。」
「俺まで呼んだのは、何故だ?」
山姥切は、自分も呼ばれたのが不思議そうだ。
その状況に、和泉守はため息をつき、本題に入った。
「要件は簡単だ。まぁ、近侍でもねぇ俺から話す事なのか迷ったんだが…主よ。少しばかり、審神者の仕事を休んだらどうだ?」
和泉守の顔は真剣そのものだ。
春香は、案の定、驚いた表情をしている。
「ホント、兼さんは何言ってんの?主に仕事をするなっていう訳?」
加州がカッとなって、声を荒げた。
「…俺は、和泉守の意見に賛成だ。と言っても、必要最低限の遠征などには出ないと行けないがな。」
山姥切は、今にも和泉守に食ってかかりそうな加州の肩を抑えて、冷静に答えた。
「な、なんでか聞いてもいい…?」
動揺を隠せていない春香は、なんとか声を出した。
「今、山姥切が言ったように、全て休む訳には行かないが、今、戦場に出ろと言われて、主は出れないだろ?」
そんな事ない、とは言えず、むしろ、その通りなので、返す言葉に詰まってしまった。
「遠征任務は、俺らだけで行けるからいいが、戦場に立つのは、やっぱり今は無理なんだろ?始めて目の前で破壊を見たんだろ?しかも…その、相手は一期だ。薬研にも、精神的な損傷が大き過ぎるから、少しずつ慣らさないといけねぇと聞いている。」
加州は春香の方を見た。
その和泉守の言葉を肯定するかの様に、春香は下を向いたまま、黙っている。
そこまで、春香の中で一期を失ったダメージが大きい事を、加州は悟った。
「…分かった…春香。これまで頑張ってきた分の、ちょっとした休みだと思って、気楽に行こうよ。ね。」
拳をぎゅっと固く握っていたが、その手を緩め、気持ちを切り替えて、加州は春香に微笑んだ。