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淡い恋 [刀剣乱舞]

第1章 賑やかな本丸


「書簡など、主さまが目覚めるまで待ってから渡せばいいものを。」

やれやれとため息交じりに言うので、加州は横目に睨みながら嫌味を返す。

「小狐丸にとっては一大事でなくても、主にとっては一大事の場合もあるんで。」

いがみ合う二人に挟まれている当の本人は、はあとため息をついた。
その横では、よくある光景とばかりに、三日月がそれを眺めている。

「はて、政府から書簡が届くとは、何かあったのであろうか。」

マイペースな三日月が空気を読んだのか、その一言で加州は、それを思い出し、懐から書簡を取り出して春香に差し出した。

「そうそう!春香。政府から、書簡が届いたんだ。早く確かめた方がいいんじゃない?」

加州が差し出した書簡を受け取りながら、春香はぷくっと頬を膨らませた。

「もう!ミツってば、また私のこと名前で呼んだ!ちゃんと皆の前では主さまって呼んでよね!」

加州はそう言われて拗ねた顔をしている。

「はいはい、あ、る、じさま。…三日月さんは春香って呼んで良くて、俺がダメとか理解できないんだけど。」

そう話を振られた本人の三日月は、やはり笑っている。

「はははっ。では、俺も主と呼ぶようにしようか。」

そう言われて、春香は慌てて首を横に振った。

「三日月さんに、主と呼んでいただくなんて恐れ多すぎますよ!」

そう言われてふむ、と三日月は顎に手を当てて少し困った顔で考えを述べた。

「そうとは言え、ここでは俺はまだ新参者だ。加州に主さまと呼べと言うのであれば、俺もそう呼ばねばなるまいと思うのだが。」

三日月は、一か月ほど前に、春香が鍛刀で手に入れたのである。
やけくその配合で出てきたものだから、自分が夢でも見ているのかと疑ったくらいだ。
春香がううっと言葉に詰まってしまったのを見て、眉毛をハの字にしているその頭をよしよしとなでながら、三日月が微笑んで優しく諭した。
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