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淡い恋 [刀剣乱舞]

第1章 賑やかな本丸


廊下を曲がると、庭では短刀たちがきゃっきゃと笑い声を上げながら駆け回っているのが見える。
そのすぐそばにある、稽古場へと続く渡り廊下の真ん中辺りに、堀川から聞いていた通りにお茶を持って、短刀たちを微笑ましく見ている三日月がいた。
そして、その隣には、小狐丸だ。
と同時に、加州の機嫌が更に悪くなってしまった。

小狐丸の肩にもたれかかってうとうとと寝ている女性こそ、彼の探していた『主』である。

「主さま!政府の使いの者が来て、書簡を預かったので起きてもらえませんか!?」

あからさまに不機嫌に足音を立てて近づいてゆくと、加州を視界に入れた小狐丸がニヤリと笑みを浮かべ、勝ち誇ったような顔で口に人差し指を当てた。

「加州よ。主さまはお疲れなのだ。もう少し静かにできんのか。」
「主さまがお疲れなのは、どこぞのお方が、構って欲しくて何かとくっついて歩くからじゃないんですか?」

わざと敬語を使い、平静を保とうとしているが、苛立ちが全く隠せておらず、目に見えている。
小狐丸はそれを煽る様に小ばかにした顔で

「お前がそうやってきいきいと煩いから、主さまがゆっくりと休めないのではないか?」

その態度に、怒りを抑えられない加州は、ずんずんと更に傍により、大きめの声で主を呼んだ。

「起きてよ春香!書簡が届いたんだよ!」

横で静観を決めていた三日月が、見かねて主を遠慮がちにゆすって起こした。

「春香よ。書簡が届いたそうな。そなたが起きなくて加州が困っておるぞ。」

春香と名で呼ばれた主は、んんと目を擦り、まだ眠そうな顔で三日月を見た。
三日月は、眠気覚ましに入れたてのお茶を差し出した。

「加州が書簡が届いたと、そなたを探していたそうな。」

んんと伸びをして、差し出されたお茶を受け取りながら、春香は後方の加州の姿をやっと捉えた。

「ミツ…ふあ…おはよう。書簡って政府から?」

春香からミツと呼ばれると、加州はいつも嬉しくなる。
それは、春香しか呼ばないあだ名だからだ。
その横では、小狐丸がせっかくの役得が終わった事を残念そうにしている。
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