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淡い恋 [刀剣乱舞]

第5章 儚い恋


廊下から、ドドドドと言う激しい足音が聞こえてきた。
近づいて来たと同時に、障子が勢いよく開いた。

「主の目が覚めたってのは本当かい⁉︎」

次郎太刀が息を切らして入ってきた。
後ろから、太郎太刀も少し遅れて入ってきた。

「弟がもうしわけない。後にしろと言うのに聞かず…」
「あんた、本当に心配したんだよ!目が覚めて良かったよ!」

落ち着いて話そうとする太郎の言葉を遮って、春香をぎゅっと抱きしめた。

「次郎…ちょっと痛い…」
「あぁっ!ごめんよ!つい、嬉しくてさ。」
「しかも…やっぱりお酒臭い…」

春香を支えていた鯰尾は、巻き込まれる形で一緒に抱きつかれてしまった。
それを見て、皆にどっと笑が起きた。

「さてと。本当は、二番隊も揃ってるし、三番隊隊長の山姥切もいる事だし、少し話を、と言いたい所だが…皆、そろそろ部屋を出よう。主も目覚めたばかりだ。あまり体に負担をかけちゃいけねぇからな。」

和泉守が、皆に部屋を出よう促したので、また様子を見に来ると口々に言って、部屋を出て行った。
外を見ると、もう夕方の様だ。
皆が部屋を出たのを確認した和泉守が、堀川と共に最後に部屋を出る。

「主さん。後でまたお粥持ってくるね。」

お盆を持った堀川が縁側に出て、手を振った。

「他の連中にもあんたが目を覚ましたって伝えておく。だから、今日はもう、ゆっくり休め。」

それに続いて出た和泉守が、後ろを振り返って言う。

「うん。ありがとう。」

春香は、やっと笑顔で答えれる様になった。

「じゃあな。なんかあったらすぐ呼べ。近くに誰かいる様にしておくからな。」

そう言うと、和泉守は、障子を少しだけ開けたままにして、去っていった。
部屋に一人残された春香は、改めて、今度は落ち着いて、最期の一期を思い出し、涙を流した。

「一期…」
「…」

障子を開けて入ろうとした手を止めて、その手をぎゅっと握りしめ、加州が春香に気づかれない様に、そっと部屋の前から立ち去った。
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