第5章 儚い恋
「皆…ごめんね…ごめんね…!私のせいで…一期が…!一期が…!」
「大将!今は何も考えるな。それ以上考えたら…」
薬研が慌てて止めようとするが、あの時の記憶がどんどん蘇ってくる。
自分の盾となった一期。
返り血の生温かさ。
苦痛を見せずに微笑んだ顔。
あの時の一期の手の温もり。
そして…
最期の幸せそうな顔。
「ごめん!ごめんね!薬研、鯰尾、五虎退…皆…ごめんね…!」
思い出せば出すほど、涙は止まることを知らないかの様に流れ、嗚咽が出る。
「主様!大丈夫だから!大丈夫だから!」
「あ、主様ぁ…」
必死で鯰尾と五虎退がなだめようとしいるが、全く効かない。
「僕、兼さんたち呼んでくる!」
堀川が急いで部屋を出た。
部屋の中が一気に騒々しくなる。
しかし、春香は、わんわんと激しく泣くばかりで、自分の鳴き声しか聞こえていない様だ。
暫くして、和泉守と山姥切、骨喰が堀川に連れられて息を切らしながらやって来た。
部屋の障子を開けた和泉守が、一瞬目を見開いたが、意を決して春香の傍に寄っていく。
「主よ!しっかりしろ!お前は悪くないんだ!」
「でも、でも…!私のせいで…私の…せいで!」
思い出したくもないあの瞬間の記憶と感触が蘇り、パニックを起こしてしまっている。
それでも、和泉守は語りかける。
「もういい!何も思い出すな!今は何も考えなくていい!」
「好きなのに…ちゃんと気持ちも伝えてないのに…ごめん…ごめん!一期ぉ…!」
和泉守の声は耳にまで届いていない様だ。
と、骨喰が、春香の傍に寄っていく。