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淡い恋 [刀剣乱舞]

第5章 儚い恋


そこから先の記憶は春香にはない。
気付けば自室の布団に寝かされており、傍には薬研と五虎退が居た。
丸一日寝ていた様で、目を覚ますと、五虎退が慌てて他を呼びに行き、薬研が自分が誰か、ここがどこか分かるかと聞いてきた。

「いやぁ、小狐丸に抱えられて帰ってきた時は、心臓が止まるかと思ったぜ!」

どうやら泣き叫ぶ春香を、皆が抑え込んだものの、止まらず、最終的には気絶してしまったらしい。
が、薬研はそこにはあえて触れずに話した。
薬研の安堵した表情を見る限り、状況は思わしくなかったのだろうと春香は推測した。

「ごめんね、薬研。あと、ありがとね。」
「俺っちは、たまたま、今、様子を見にきてただけだ。重傷負ってボロボロになっても、大将を必死で守って帰ってきた、あいつらにお礼を言いな。」
「うん…」

少しずつ、その時の記憶が蘇る。
それを察してか、薬研が話を切り替えた。

「そう言えば、今、五虎退が皆に報告に行ってるからよ。そしたら、堀川と鯰尾が大将のご飯持ってくっから、しっかり食べろよ!そしたら、俺っち特製の明日から元気になれる様に配合した薬を飲んで貰うからよ!」
「あははっ!何それ。始めて聞いたよ。」

力なくも笑ってくれる主にほっとしつつも、薬研は気を抜けないでいた。
今は何も思い出すなとばかりに、薬研がこの一日の間の本丸でのたわいもない話を、事細かにしてくれる。
暫くすると、薬研の言う通り、堀川と鯰尾がお粥を作って持ってきてくれた。
思う様に体が動かないので、鯰尾に支えられ、堀川が食べさせてくれた。
一日ぶりのご飯は温かくて、春香は段々と涙が出てきた。
薬研達はそれを心配そうに、見ている。

「あはは…ごめん…なんか…涙が止まらないよ…」
「泣いたっていいよ。よしよし。」

鯰尾が優しく背中をさすってくれている。
その優しさが余計に染み込んで、どんどんと涙が出てくる。

「ごめん…ごめんね…」
「主様…」

いつもは誰かの後ろに隠れてばかりの五虎退が、春香にぎゅうっと抱きついてきた。
その体は温かくて、優しい。
そう…優しいあの人の温もりを、思い出した。
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