• テキストサイズ

淡い恋 [刀剣乱舞]

第5章 儚い恋


春香が、恐る恐る目を開けると、自分の前に跪いた状態で、微笑んだ一期の顔が目の前にあった。

「一、期…?」
「…お怪我は…ありませんか?」

何が起こったのか、春香には理解出来ない。
コクリと頷くと、安堵した表情を浮かべる。
そっと、一期の頬に触れると、嬉しそうな顔をした一期がその上に手を重ねた。

「良かっ…た…私の、大切な…人。」

「主よ!すぐに一期の手当てを!」

最後の検非違使を倒した後、鶴丸が叫んで初めて気付いた。
春香が刺される瞬間に、一期が身代わりとなったのだ。
よく見ると、重ねた手は、血で染まっている。
春香自身に怪我は全くないが、一期の返り血を浴びていたのだ。

「一期…!一期!すぐ手当てするから!」
「春香…少し、私の話を…聞いて頂けますか…?」

手が震えながらも、必死で手当てをしようとする春香の手をそっと抑えて、一期は話す。

「しゃべっちゃ、ダメ!…ダメ!」

春香の目からはどんどん涙が溢れてくる。
それを困った様に笑いながら、一期は涙を拭った。

「春香。私は…貴方の事を…お慕い、申して…おりました。」
「分かった、から…これ以上、喋らないで…」

止めようと思っても、流れる涙は止まることがない。
春香は、涙を拭っている一期の手をそっと、自分の頬に当てた。

「泣かないで…最期に…貴方の…笑顔を、見せて…下さい…」

一期の体が光り出す。
もう、付喪神の力が限界の様だ。
春香は、それを繋ぎ止めるかの様に、一期の手をぎゅっと握った。

「私は…また、すぐ…に産まれ…かわれ、ます…。今の、記憶は…消されて…しまい、ますが…そ…の時は…もう一度…貴方の、所へ…参りま、しょう…」
「イヤよ…貴方が、今の貴方が傍に、居て…」

もう、一期の体が消えかけている。
それを理解した一期は、大丈夫と微笑んで、春香にそっとキスをした。

「ありがとう…春香…私の、愛しい…人よ」
「待って…待って!一期!私も…私も一期が好き!好きなの!だから…いかないで…」

最期に、これまでにないくらいの、幸せそうな笑顔を浮かべて、一期は光となって消えた。
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp