第4章 念願のデート
さっきのお店では、加州へのお土産を選んでたはずなのに、何故か自分へのプレゼントだと渡す春香の顔を、驚いてまじまじと見た。
「一期にだよ。一番隊への昇格祝い…と、今日、私に付き合ってくれたお礼。って言っても、高価なものじゃないけどね。」
照れながら言う春香の前で、袋を開けてみる。
中には数珠型のブレスレットが入っていた。
「パワーストーンって言ってね。その石を身につけている人を、怪我や災いから守ってくれるんだって!」
「なんと…身にあまる幸せでございます…」
一期が今日一番の、幸せの溢れた笑顔を向けると、春香は一期以上に嬉しそうだ。
ー加州に遠慮してしまってはいけないな。二人共、愛する者とどう向き合って、どうなりたいのか…ただ想うだけでは相手に伝わるまいー
三日月の言葉が蘇る。
「春香、少しだけ、目を閉じて貰ってもいいですか…?」
ー今、この時だけは自分の気持ちに素直になろうー
「どうしたの?」
ー帰れば元に戻るからー
「少しだけ…ダメでしょうか?」
ー今、この時だけはー
「分かった。少しだけ、ね。」
ー最後の我儘をー
春香が目を閉じたのを確認して、そっと触れるだけのキスを、おでこにした。
目を開けた春香の瞳が揺れている。
頬を赤く染めて。
今の状況が恥ずかしくなった一期は、一歩後ろに下がった。
春香は待ってと言わんばかりに腕を掴んで。
口が何かを言おうとしている。
まるで一期の事が好きだと伝えたい様に。
あぁ、なんて自分に都合のいい解釈なんだと一期は思った。
確実に嫌われると思っていたのに、予想外の反応だった。
一期の顔も、火照っている。
それでも、目の前にいる春香の顔が、たまらなく可愛くて、2回目のキスを、今度は唇にした。