第4章 念願のデート
ーこんな顔をして貰える加州は幸せ者だ。
自分では、こんな笑顔には出来ないー
そう思えば思うほど、もうこんな時間しか続かないなら、部屋に帰りたいと思い始めていた。
「そろそろ暗くなりましたし、帰りましょうか。」
気づけば帰ろうと促していた。
「待って!あのね、どうしても帰る前に行きたい所があるの…ちょっとだけ…お願い!」
一期は懇願されて、断る訳にも行かず、頷いた。
春香は時計を確認して、時間がないとばかりに一期の腕を掴んで走り出した。
「わぁっ!春香!?」
訳も分からず、春香の後に続いた。
「はぁっはぁっ…ま、間に合った…」
暫く走ると、通りの真ん中に大きなツリーが飾られている。
そこには、沢山のカップルや家族連れが、ツリーを見上げて何かを待ってわくわくしている。
「後少し!3、2、1…!」
「…!きれいだ…」
春香のカウントダウンと同時に、大きなツリーにイルミネーションが点灯した。
隣では、春香がとても嬉しそうに、目をキラキラさせてそれを見ている。
さっきまでの情けない考えをしてしまった自分の事を、春香に対して申し訳なくなってきた一期は、勇気を出してそっと手を繋いでみると、その手をぎゅっと握り返してくれる。
こちらへ向いた顔は、とてもはにかんで笑っているが、嬉しそうに見えた。
気付くと、一期は春香を抱きしめていた。
「一期…?」
「少しだけ…こうさせて頂けますか?」
「うん…分かった…」
春香は、一期の腕にそっと優しく手を置いた。
「今日、ここに来られて良かったです。ありがとうございます。」
「良かった…あのね、一期。渡したい物があるんだけど…」
そう言われて、一期は体を離した。
春香は先ほどの店の紙袋から、可愛らしくラッピングされた袋を取り出し、一期に差し出した。
「はい、これ。一期へのプレゼント。」
「え?わ、私にですか?」