第4章 念願のデート
「ん〜。体調崩してるミツには何かお土産買って帰りたいな。一期は何がいいと思う?」
春香は、外出後から寝ていると言う加州の事を気にしている。
近侍の立場である加州を気遣うのは当たり前なのだろうが、それと同時に、やはり春香は加州が好きなのだろうかと言う考えまで出て来てしまう。
それと同時にきゅっと痛くなる胸を隠す様に、一期は笑顔で答える。
「加州の好みは、何でしょうか?やはり、好きな物を土産で貰うと喜びも一段と増すのではないでしょうか?」
「ミツの好きなものかぁ…綺麗なネイルとか、美容グッズ…あっ!可愛い小物でもいいかも!」
春香はうんうん唸りながらも、目に止まった雑貨屋に入り、楽しそうに選んでいる。
ひとつ気になる物があったらしく、一期と繋いでいた手を離してしまった。
あ、と出そうになった声を抑えて、その離された手を、痛む胸の上にそっと置いた。
「ちょっと買ってくるから、外で待ってて!」
「…分かりました」
なんとか笑顔で答えると、なるべく春香の方を見ない様にしながら、店の外へ出た。
外はすっかり日が落ちて、雪が降り始めている。
手のひらを出すと、そっと手に落ちて、溶けてゆく。
冷たくて儚い雪に、少しだけ自分の事を重ねている。
恋とは、なんて切ないのだろうか。
これなら、自分の気持ちを認識せずにいた方が良かったのではと、考えはどんどん下を向く。
彼女は自分の主だと、今更言い聞かせた所で気持ちが止まる訳ではない。
それで止まるものならもっと早くにやっていた。
「心とは温かくもあり、辛いものでもあるだな…」
一期の言葉は、雪と一緒にそっと溶けていった。
「一期!お待たせ!今日は誰にも声をかけられなかった?」
「春香…はい。大丈夫ですよ。」
先ほどの自分が見られていなかったか心配になったが、何事もなかったかの様に話そうと心掛けた。
「いいものは買えましたか?」
「うん!えへへ♪」
「…とても嬉しそうですね…」
「分かっちゃう?ふふっ」