第3章 無自覚の三角関係
「加州が気になるのか?」
一期は三日月の一言ではっと我に返った。
「い、いえ…そんなはずは…」
ないとは言い切れず、言葉が途切れてしまった。
それを見て、三日月はふっと笑った。
「おぬしが変わったのは、春香の為であろう?見ていれば分かる。だが、加州に遠慮してしまってはいけないな。二人共、愛する者とどう向き合って、どうなりたいのか…ただ想うだけでは相手に伝わるまい。」
一期は言われた意味を理解できず、戸惑っている。
「あの…三日月さん。何を言っておられるのか分からないのですが…」
「こいつは…驚きだな…」
三日月と鶴丸は驚いて顔を見合わせたが、なるほどと頷いた。
「はっはっはっ。こちらは無自覚ときたか。なに、恋の病を拗らす前にと思ったじじいのおせっかいだ。」
「こっ恋!?」
「いや、無自覚と言うより、無意識に近いのかもしれないぜ?」
二人は楽しそうに笑っているが、一期は理解が出来ない。
と言うより、意識しない様に、ふれない様にしていたところを触れられた様な気持ちだ。
「さて、加州にも忠告された事だから、もう寝ないとな。一期もちゃんと体を休めろよ。」
そう言うと、三日月達は部屋へと戻って行った。
一期は一人残された縁側で、胸に手をあててみる。
病と言われ、もう一度、自分に聞いてみたが、主は尊い人だとの考えが先に出てきてしまい、自分自身でも分からない。
薬研に聞けば何か分かるのだろうかと、部屋まで行こうかと考えたが、これは自分で見つけなくては行けない答えの様な気がして、想い留まり、自室へ行く事にした。
「さて…三日月さん。あの二人をあぁしてわざわざ焚き付けた意味はなんだい?」
鶴丸が三日月に問うた。
「ただのじじいのおせっかいだ。せっかく付喪神となり、体だけでなく、心も手に入れたのだ。想いを募らせるだけで終わらせるのはもったいないと思ってな。」
鶴丸は三日月の返答に少し考えて、
「まぁ、なる様になるさ。」
と、頷いた。