第3章 無自覚の三角関係
「まあ、そう焦るでない。ただ、近侍のお前と少し話をしたかっただけだ。おお、そう言えば、この前、加州が教えてくれた肌の美容法とか言うのは良かった。おかげで肌がつるつるになったぞ。礼を言う。」
「まさか、三日月さんが美容に興味あるとはなぁ…こいつは驚きだぜ。」
あからさまに加州が不機嫌だからなのか、全く気にしていないのか、三日月と鶴丸は関係のない話をし始めた。
「あの、明日も早い事ですし、程々になさって下さいね。」
気を利かせた一期が間を持とうとしている様だ。
それに対して、加州は少し不機嫌そうに、一期を見た。
「そうなんだけどさ。三日月さん達が起きてくれなかったら、任務も出来ないし…その場合は、代わりに一期がくれば?」
「私ですか!?そんな、三日月さん達のかわりなど、恐れ多い!」
まさかの自分への指名に、一期は慌てた。
加州が警告してみるも、三日月はそれもよしと笑っている。
その様子に、ため息を零し、加州は一杯だけ酒を飲むと、さっさと立ち上がってしまった。
「おや、もう行ってしまうのか?」
「春香が、まだ報告書をまとめてるみたいだから、様子をみに行くの。」
さすがは近侍、と言いながら、さらに三日月は言葉を返す。
「こんな夜更けに様子を見に、とな。ふむ。という事は、夜伽か?」
思わぬ単語の登場に、加州と一期は凍り付いた。
「なっ、よ、夜伽とか…そ、そんな訳ないでしょ!」
「ほぉ。」
焦って言葉を返す加州が面白いのか、三日月は笑っている。
「そんなに焦るな。ただの、じじいの戯れだ。お前の気持ちが簡単にばれてしまうぞ。」
そう言われて、加州はうっと言葉を詰まらせた。
一期は、二人に挟まれておろおろとしている。
「と、とにかく!俺は主のとこに行くから!一期も、いつまでも相手してないで、さっさと寝なよ。」
そう言葉を残して小走りに加州は去って行った。
その後ろ姿を、一期は何とも言えない表情で見ている。