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淡い恋 [刀剣乱舞]

第3章 無自覚の三角関係


「あ、あーんって…」

いきなりの事に、加州は照れている。
前から春香は誰に対しても友好的で、スキンシップの多い人だとは分かっていた。
特に加州に対しては、遠慮がない。
しかも、悪気などはなくやってくれるから厄介なのだ。
横の安定も、この状況でそんな事をするとは思っていなかったようで、口をあんぐりと開けている。

「ミツが嫌なら、安定にあーんするよ?」

中々口を開けない加州に、春香はむくれている。

「だ、ダメ!」
「じゃあ、あーん。」

加州が恐る恐る口を開けると、春香は嬉しそうにクッキーを加州の口に入れた。

「ね?美味しいでしょ?」
「うん、美味しい…」

正直なところ、今の状況で、味なんて分かるはずもなく…。
赤くなってしまった顔を隠すため、加州は横を向いてしまった。
と、一期と一瞬目が合ったが、向こうがそらしてしまった。

「一期、そんなに主を見つめて、どうしたんだ?」

山姥切が、気になったようで、一期に声をかけた。
一期は驚いて、顔を真っ赤にしながら否定した。

「そ、そんな、見つめてなんていませんよ!」
「一期が同じように、あーんして欲しいなんて、こいつは驚きだな。」

けらけらと楽しそうに鶴丸が言った。
すると、さらに一期の顔が赤くなっていく。

「ち、違いますよ!違いますから!」
「い、いち兄がそんな事を思っているなんて…すみません」
「はははっ。いち兄が困ってる!」
「あんまりからかうと、いち兄が怒る。」

弟たちまで加勢してきたので、一期は慌てている。

「じゃあ、一期もあーんってしてみる?」
「え!?」
「えっ…」

加州と一期の声が重なった。

「い、いや、私は先ほど沢山いただいて、もうお腹がいっぱいですので…!」

一期が全力で首を横に振った。
春香は少し残念そうにしながら、

「そっか…じゃあ、今回は止めておくね。」

と言った。
それを聞いて、ほっとしたのは一期だけでなく、加州もだ。

「よかったね。」
「…何が。」
「別に。」

安定が二人にしか聞こえない声で話した。
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