第3章 無自覚の三角関係
入り口の煩さに、2人は手合わせを止めてしまった。
「主様!骨喰に鯰尾まで。皆さん、どうかなされましたか?」
一期はなんの騒ぎだと戸惑っている。
「…皆で写しの俺を笑いに来たのか。」
山姥切はいつも通りだ。
その発言に周りが苦笑いをしてる中、春香はとても嬉しそうに山姥切の傍に寄って行った。
「まんばが手合わせしてるから、感動してたんだよ!凄いよ!本当に凄い!じゃあ、次は安定とやってみてよ!」
主からキラキラとした期待の目で見られては、山姥切でも嫌とは言えない様で、下を向いて布を少しかぶり直して頷いた。
「俺なんかとでもいいなら…かまわんってうわっ!」
春香はその返答に、やったと叫びながら喜びのあまり山姥切に抱きついてしまった。
抱きつかれた山姥切は照れて布を深くかぶってしまった。
「ちょ、春香!そう誰にでも抱きついちゃ、ダメだって!」
「やっぱり世界は愛と驚きにあるれてるぜ。」
加州が少し不機嫌になっているので、鶴丸は面白そうにしている。
安定達はその光景に苦笑いを浮かべた。
手合わせは結局その場に居た者達で行う事になり、春香の指示で
安定と山姥切、鶴丸と鯰尾、加州と骨喰と組み分けをした。
「では、私はどうすれば…?」
一期は何故か手合わせから外されたので戸惑っている。
「一期は私と皆のを見るの。ずっと演習もいいけど、外側から見て何かを得る場合もあるからね。」
と、春香の横に座る様に促した。
一期は緊張した様子で、遠慮がちに少し離れて座った。
それを確認した春香はふっと微笑んで、3組の状況を確認し、一呼吸おいて号令をかけた。
「では、はじめ!」
春香の掛け声で、それぞれに体をほぐしたりしていた皆の空気が一気に張り、お互いの本気をぶつけ合っている。
それを一期は丁寧に観察している。
ふと、横に視線を送ると、春香も皆の様子を真剣に見ている。
一期の視線に気づいたのか、こちらを向いた。
「皆の真剣にやってる手合わせを、しかも一度に3組も見れるなんて、主冥利につきるよ。ありがとね、一期。」
春香が今自分にだけ向けているこの嬉しさで溢れた笑みに、一期の心臓は煩いくらいに鳴り出した。