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淡い恋 [刀剣乱舞]

第2章 一期一振、現世へ行く。


外の世界は一期にとって、初めてだらけだった。
沢山の人。
沢山のお店。
沢山の音。
その中で、一期は何かと女性に見られているという事に、途中から気がついた。
あまりにも視線を感じるので、やはり現世の者ではでない自分を異物だと感じられているのだろうかと不安になってきていた。
そんな事を言えるはずもなく、何より前を歩く春香についていくので精一杯だった。

不意に、どんっと人にぶつかられてよろけてしまった。
その一瞬で一期は主の春香の姿を見失ってしまった。
辺りを必死で見回してみるが、やはり見当たらない。
何より、人の多さに目眩がしている。
よろよろと歩道の端に行き、壁にもたれかかってると、遠目で見ていた女達が声をかけてきた。

「あのぅ。お一人ですか?良かったら、今から私達と一緒に遊びに行きませんか?」
「あっいや、私は…」

声をかけられるとは思ってなかったので、どう答えて良いのか分からず、しどろもどろになっている。

「ふふふ。なんか、かっこいいのに可愛い!どこ行きますか?」

自分にどんどん迫ってくる女性の勢いと、彼女達のつけている香水の匂いで吐き気までしてきた様だ。
このまま主と会えなかったら、自分はどうなってしまうのかと意識が遠退き始めた時、聞き慣れた声と温かい手が一期を包んだ。

「一期、待たせてごめんね!」
「あるっ…ごほんっ…春香…」

春香が優しく一期の手を握っている。
一期がいない事に気がついて慌てて引き返してくれた様だ。
走ってきたのか、少し息が上がっている。
女連れだと分かったので、声をかけてきた女達はなんだとさっさと引いていった。
それを確認した春香は、ほっと胸を撫で下ろした。

「ごめんね!一期。いつもの調子で歩いちゃダメだよね?私の認識が甘かった…」

春香が、申し訳なさそうに眉をハの字にしている。

「いえ、大丈夫です。むしろ、こうして迎えに来てもらわないといけない状況なのが申し訳ないくらいです…」

力なく笑う一期に、春香はふるふると首を振った。

「ちゃんと周り見てない私がダメなの…何より、一期はイケメンだもんね。声かけられちゃうよね。」
「イケメン…ですか?それは何でしょうか?」
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