第20章 選択する
「機嫌がいいようだが何かあったのか?」
「まぁね、そのうちアブラクサスにもわかるさ」
「オメーがそういう時は大抵ろくな事じゃないさ」
少年は二人の青年と共に人気のない部屋で話していた。
品のいいソファーやローテーブルと調度品が少し。
談話室ではないようだが色は深緑を基調としているようだった。
黒髪の男が形のいい眉を愉快そうに上げながら少年に話しかける。
「あの少女のことか?」
「あの子は面白い。私も気になるな」
プラチナブロンドの男の発言に少年は少し驚いたようだった。
「アブラクサス、お前がそういうのは珍しいな。まぁ、きっと近々この部屋に呼ぶだろうね」
「そりゃあ愉快だ」
「……オリオンいい加減品のある言葉遣いをしてくれ」
オリオンと言われた黒髪の男はプラチナブロンドの男に向かいニヤリと笑う。
「お外ではちゃーんとしてるだろ?それに我らがキング、ヴォルデモート卿が許してんだ。いーだろ?」
「言葉には目を瞑るがテーブルに靴を載せるのは許可してない」
「おっと失礼」
長い足を椅子から下ろす。
その仕草も様になるのだから仕方がない。
少年はマルフォイ家とブラック家次期当主を仲間にすることを成功させていた。
元々純血を尊んでいたので難しいことは無かった。
きっと後にも先にもこの家の当主を跪けさせたのは少年だけだろう。
3人だけの部屋は深い紅茶の香りと明るい部屋に似合わない闇が広がっていた。
青年はそれぞれ白い陶器の美しいカップを優雅に掲げている。
少年は黒い1冊の手帳を弄びながら共にカップを掲げた。
―チン
軽やかな音とは対照的に重く暗い闇は少女の足元にまで忍び寄っていたのだった。