第12章 イタズラ
少女は友人に次々とお菓子をねだっていった。
自分の寮に限らず他寮にも少ないながら友人のいる少女は昼休みまでに籠の中は貰ったお菓子で一杯であった。
(他寮に友人がいることは珍しくないがやはりスリザリンとしては異質であった)
夕食の席では下級生は思い思いの仮装をするものが多くいつもより怪しげな雰囲気のする大広間は賑わっていた。
『私も仮装すれば良かったなぁ』
「やめなさいよ、はしたないわ」
「来年まで我慢しなさい」
『アンナ!来年手伝ってね!!』
「もう!」
アンバーは14になるのに!とプリプリとしていたがアンナはいいじゃない、と笑っている。
なんだかんだ言ってアンバーも協力してくれることを少女はこの少ない付き合いの期間で心得ていた。
『早く来年のハロウィーンにならないかなぁ』
「おやMs.琴吹は今年のハロウィーンはもうおしまいなのかな?」
パンプキンパイをつつきながら少女が呟いていると背後からテノールが響く。
『あ!アブラクサス先輩!!』
「「こんばんわ、マルフォイ先輩」」
「2人も彼女のようにアブラクサスで構わないよ」
『アブラクサス先輩も私のことヒカルでいいです!それから……Trick or Treat!!』
青年は杖を一振して重厚感のある箱を出現させた。
シックな黒い箱には深緑のリボンが飾られている。
中を開けるとコウモリの形をしたチョコレートだった。
同じものがアンバー、アンナの手元にあるのがわかる。
『かわいい〜!ありがとうございます!!』
「喜んでもらえてよかったよ。
Ms.ヒカル、Trick or Treat?」
『先輩、ラッキーですね!』
最後の1個でした、と言い少女は朝に作ったかぼちゃのパウンドケーキを渡した。
『手作りとか嫌じゃなければいいんですけど…』
「素敵だよ、後で美味しく頂こう」
友人達は後で談話室で渡すことを伝えていた。
青年は少女たちと軽く話したあと少年の元へ歩いていった。
しかし青年の行先など目もくれず目の前のご馳走に舌堤を打つ少女は少年の悪巧みをする目線など気がつくことは無かったのだった。