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制服少女と赤瞳少年【HP】

第2章 出会う


少年は1人歩いていた。
もうすぐあの忌まわしい所に帰らなければならないのが苦痛で仕方がなかった。
今ではもう目を瞑ってでもこの禁じられた森を散歩できるほどこの場所は知り尽くしていた。

「アバタ・ケダブラ」

禁じられた森で禁じられた呪文の練習をしたのは去年のこと。
扱いは完璧だ。
少年は放たれた緑色の光を目を細めて眺めていた。
その清潭な顔はまるでその緑色の光をうっとりと愛でるような表情であった。
今を思えば少年はこの場所で油断をしていたのかもしれない。
禁じられた森に入ってくる者なとそうそういない。
ましてや夏休み前日になど尚更に、と。

『……okud………………』

今風になにか人の声が混ざっていなかったか。
城の声が個々まで届いたのか?それはない。
ここと城は何十mも離れているのだから。
だとしたらこの森に自分以外の誰かがいるのか。

「…ッチ」

いらだたしげに少年は舌打ちを一つした。
自分のひとりの時間を邪魔した人物に、
この地で油断しきっていた自分自身に。

風上に向かって歩を進めた。
この方角だと森を抜け湖にでる。

森には不釣り合いなそしてこの学校にも不釣り合いな音が聞こえる。

―カラカラ

タイヤがどこか硬い地面を転がる音だ。
ここは森なのでもちろん地面は土だ。
硬い地面などましてやタイヤが奏でる音が聴ける場所などこの近くにはない。
少年はポケットにしまった杖を再度取り出す。

ゆっくり胸の前で構えて
人の気配がする方に近寄る。

見たことのない後ろ姿に警戒しながら、
黒髪のリュックを背負った少女に近づく。

そして声をかけた。
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