第2章 出会う
緑の香りをのせた爽やかな風が少女の頬をなでる。
かすかに水の音がする。
きっと近くに川か湖でもあるのだろう。
先ほどの転落制服少女は美しい草原で寝ていた。
寝ていたとわかったのはもう少しあとだが(正確には気を失っていたのだが)
あまりにも目覚めが、意識の覚醒が寝起きのそれだったので寝ていたのではと思われるほど自然な意識の覚醒だった。
「ん……」
あくびを1つ。
ついでに伸びも1つ。
転落制服少女は腹筋の力で上半身を起こしあたりを見渡した。
「ここ、どこ…?」
日の光を浴びキラキラと輝く水面。
若草色、という表現がふさわしいほど美しい草原に少女はいた。
「……天国だ!」
目立った外傷もなく
知らない美しい場所でなおかつ自分は転落したのだから生きているわけがない。
死因は転落死だろう。
死因があまりにもカッコ悪く少女は眉をひそめずにはいられなかった。
周りに荷物まであるのはきっと修学旅行への未練かなにかだと結論付けた。
天国ならば祖母がいるかもしれない、そう思い少女はあたりを散策することにした。
自分の荷物は一応持っていく。
万が一生き返ったとき修学旅行に行けるように、だ。
ありえないことは十分に少女も理解しているが期待したくなるのは生にすがりたいという自分の強欲さなのだろう。
-カラカラ
あれだけ重たかったキャリーはひどく軽快な音を立てながら草原にタイヤを取られることもなく進んでいく。
少女は疑問に思いながらも持ち前の楽天さで気にすることをやめた。
「……誰だ」
湖の辺で少女は少年にであった。