第9章 初めまして、2回目
『これが、あの………!!!!』
うひゃー、と少女は年頃の女性としては有り得ない悲鳴に似た歓声を上げながら列車の前にいた。
「まだ騒ぎ足りないのか…」
呆れる少年の声も当然である。
9と3/4番線の前でひとしきり騒いだ挙句、
発車の30分も前にここに来ているのである。
『ねぇ、リドル君!これ先頭から後ろまでダッーって走っていいと思う?』
「は?……いや、まぁ…もういいんじゃないか?」
投げやりな返事の少年だがそれでも嬉しそうに少女はやったぁと顔をほころばせるのだ。
そしてお世辞にも上手いとは言えない足取りで、
そして走っているのかと若干疑いたくなる速さで少女は走り去った。
「大丈夫か…?」
少年は若干の不安を抱きながらも目の前にある荷物に目を向け列車内に移動を始めたのだった。
一方少女はと言うと、既に歩いていた。
走っていたのはほんの1両分にも満たない程度で、
テクテクと歩いていた。
早めに来たのであろうホグワーツ生にすれ違うが残念なことにこの時代の人達を少女は知らない。
『うーん…。最後尾まで行けるかなぁ…』
まだまだ先の見えない列車に不安を抱いた。
少女は列車を駅をきょろきょろと見渡して歩いていた。
つまりは前を向いて歩いていなかったのである。
当然の如く前を見て歩かないことは人とぶつかる事が起こるわけであり、少女も例外に漏れることなくまた人とぶつかったのだ。
『ご、ごめんなさいっ!!』
「すまない、お嬢さん。お怪我は?」
『大丈夫、です……』
少女がぶつかったのはブロンドが美しい青年であった。
好青年とぶつかったからと言って恋が始まるのか、と言うとそうではないのだが少女は青年に見惚れてしまった。