第8章 待っていた、待たれていた
少女は段々と苛立ちを感じていた。
この店主はどういう基準で杖を差し出しているのだろうか、と。
次の杖を差し出され手に取る。
今度の杖は何も起きないかわりに振っても何も出来なかった。
『(アクシオ、私だけの杖!……なんてくる分けないか。)』
ダメもとだ。
呼び寄せの呪文はハーマイオニー曰くイメージが大事なのだからまだ見ぬ自分に合った杖なんて来るわけなかった。
-…カタカタ
微かに音が聞こえたのは気のせいだろうか?
-カタカタ、カタカタ
気のせいではない。何かものが当たる音が奥から聞こえる。
何かが崩れ落ちる音が聞こえたと思ったのと、
何かが頭にあたり気を失ったのはほぼ同時だった。
凄まじい音だった。
老人は奥から一つのホコリをかぶった箱が少女めがけて飛んでくるのを目にしていた。
目にしたからと言って理解が追いついていた訳では無いのだが、
とにかく奥から箱が少女の元にやって来た。
箱は少女のおデコにぶつかると少女とともに落下した。
気絶した少女を抱き抱え杖を取り出す。
そして魔法で少女を起こしたのだった。