第8章 待っていた、待たれていた
淡い水色のシャツに紺地のチェックプリーツスカートを合わせた制服のような出で立ちの少女と、
白く長いヒゲを携えた青い瞳の老人はある店に来ていた。
「あぁ、これはいかん。」
壁にはたくさんの箱があり、
床にもいくつも積み重なっている。
蓋が空いているものもあればホコリをかぶっているものもある。
何故か鳥の羽が散らばっていたり、
木でできたカウンターが湿っていたり、
書類らしき羊皮紙があちらこちらに点在していたりと店はお世辞にも片付いていると言えないが、
この異様な散らかりの原因は制服少女にあったので店主を責めるわけにはいかない。
少女が店主に渡される杖を持つ度に
風が吹いたり、
ものが爆発したり、
巨大化したり、
突然杖から水が吹き出したり。
とにかく少女は自身に合う杖に巡り会えず、
店を荒らし続けていた。
そう。
少女と老人はオリバンダーの店に杖を求めて来店したのてあった。
現状はまぁ、部屋の散らかり用で説明がつくだろう。
「まぁまぁ、焦ることはない。」
最初はこう言っていた老人も5本、6本と試すうちに内心焦りを感じていた。
異世界からきた少女、この少女に合う杖が果してこの世界にあるのどろうか、と。
『(杖、私に合う杖はないのか…)』
少女は焦るどころか諦めていた。
どうせ自分は異世界の人間だ。
日本の桜の木で作られた杖も(つまり夢小説などでヒロインが持つ定番)世界に一つしかない貴重な木で出来た杖(これも定番だろう)も少女には合わなかった。