第1章 転落死というプロローグ
「重...っ!」
朝のラッシュの時間帯にキャリーを抱えた制服の少女がいた。階段にはほとんど人がいなく、おそらく次の電車が到着するまで少女だけであろう。
「...っよ、と」
1段上がり、キャリーを持ち上げ。
キャリーを先に上の段に置き自身が上がり…。
途方もないような階段はもう終わりが見えていた。
まぁ、少女にとってはラスト1段も最初の1段も変わらないのだろうが。
「これを運べば、京都っ………っ!?」
修学旅行の大荷物は角をタイヤが滑り、落ちた。
あくまで自然法則の重力に従い、
とっさに手を離すことなく大きな荷物は
戸惑う少女とともに転落する。
天井の蛍光灯が眩しい。
電車が来るアナウンスが聞こえる。
誰もいないので誰を巻き添えにするわけでもなく、1人と1つは落ちていった。
どこかの童話の主人公よろしく
誰に助けられることもなく
けれど何を追っているわけでもなく
ただただ背中を地に向け
蛍光灯を仰ぎ見て
電車と人の行き交う喧騒の中を落ちていく。
電車の騒音が聞こえなくなり
……制服少女はブラックアウトした。
【転落死というプロローグ】