第5章 新しい生活
―バチンッ
『きゃぁッ……!!』
突然目の前に小さな、少しみすぼらしい格好の生き物が現れた。
古い布を体に巻き付け、とんがった耳と大きな目がきょろきょろ、と言うよりはぎょろぎょろしている…屋敷下僕の妖精だ。
『あなたは…誰?』
「わたくしめは、コーニーですッ。ヒカル・琴吹様朝食をお持ちしましたッ!」
やけに元気のいい屋敷下僕の妖精だ。
物語に書いてあったとおりキーキーとした耳に痛い声だ。
『あ、ありがとうコーニー。私はヒカルでいいわ。』
「わかりましたッ!ヒカル様はなんとお優しい方なのでしょうッ!!」
テーブルの上にはいつの間にか朝食が暖かい湯気を立てながらお行儀よく並んでいる。
「食べ終わりましたらわたくしめをお呼びくださいッ。」
―バチンッ
深いお辞儀とともに屋敷下僕の妖精はいなくなった。
再び少女は目をパチパチと瞬かせ驚いた様子だったが空腹には勝てなかったのか、席について両手を合わせた。
『いただきます』
屋敷下僕の妖精が作っているこの城の料理は美味しかった。
パンはモチモチと柔らかく芳ばしい香りが食欲をそそり、肉汁が溢れるチキンは今まで食べた中で一番だった。
デザートも数が多くすべてを食べることは出来なかったがどれも甘すぎずクリームも重くなく食べれた。
ただかぼちゃジュースだけは好きになれそうもなかったなのだが。