第5章 新しい生活
与えられた部屋で目が覚めるとなにやら廊下が騒がしい。
しかし少女は部屋から出ることを禁じられていたので扉の前を行ったり来たりするだけで扉に触れることはなかった。
数時間前に遡る―
「ここがヒカルの部屋じゃ。」
そう案内されたのは少し北よりの部屋だった。
食堂や各授業で使う教室など生徒が寝静まった夜の廊下を老人に案内されていた。
『ここ…?』
ギィ―
少し軋む音を立てながら扉を開けると大きなベットに鏡付きの化粧台、大きな扉はクローゼットだろうか。
とにかくひとり部屋なのだろうが広い部屋だった。
少なくとも少女が来た世界ではこんな広い部屋は高級ホテル以外知らなかった。
「寮が決まっていないしここがヒカルの家じゃからのぉ。足りないものがあれば何でも言っておくれ。」
おお、そうじゃ。
帰りかけた老人が振り返る。
「明日はまだ生徒がおるので出歩かんようにしておくれ。ヒカルは夏休み後入学じゃからのぉ。騒がれてしまう。」
ほっほっほっ、と笑いながらお茶目にもウィンクを一つして老人は扉を閉めた。
そして少女は広い部屋で1人目が覚めたのだった。